科学

なぜ飲み物の缶は筒の形なの?

まず答え

飲み物の缶の多くが筒の形なのは、炭酸飲料のように中から圧力がかかる飲み物にも使いやすく、薄い金属板を機械で速く成形できるからです。手に持ちやすく、立てて並べやすいことも、この形が広く使われる理由です。

上と下が丸く、周りを曲がった壁が囲むこの形を「円筒形」といいます。丸いから壊れない、というわけではありません。素材の厚さや硬さ、底やふたの形も、缶の強さに関係します。

左は、缶の中の圧力が丸い側面を外へ押す図。中央は、平らな板をカップに押し、側面をのばして缶にする工程。右は、缶の底が内側へ丸く出て、外からは中央がへこんで見える断面図です。
側面は内側からの圧力を受け、DWI加工では板をカップにして側面をのばします。底の曲面も圧力を受ける工夫です。図はしくみを簡単に示しており、缶の強さは金属の種類や厚さ、ふたなどにも左右されます。

筒の側面は圧力を受け止めやすい

炭酸飲料には二酸化炭素が溶けています。ふたを閉じると、飲み物から出た気体が缶の内側を押します。円筒形の側面は、この力を受けて、円周に沿って引っぱられます。

この力は「周方向応力」と呼ばれます。言葉は難しくても、缶の壁が輪の向きに引っぱられて内側の圧力を支える、と考えるとイメージしやすくなります。平らな面が広い箱形の容器では、面の中央がふくらみやすいため、厚くしたり、折り目などで補強したりする工夫が必要です。角のある缶も作れますが、形に合わせて強さの作り方が変わります。

薄い金属板から缶本体を作る

多くの飲料缶は、底のある本体と、あとから取り付けるふたの二つの部品からできています。本体を作る方法の一つが、DWI(絞り・しごき加工)です。板をカップの形に押し、筒の部分を輪のような型に通して、少しずつ薄く長くします。底も本体と一緒に形づくられます。

東洋製罐の資料では、DWI缶の側面は薄いものだと約0.1ミリメートルにできます。どの缶も同じ厚さという意味ではありませんが、金属を厚くするだけでなく、形と加工を組み合わせて軽く作っていることがわかります。

缶の底が内側へへこんでいるのはなぜ?

缶の底は平らではなく、外から見ると中央がへこみ、内側から見ると丸く盛り上がったドームの形をしています。この曲面も、缶の内側からかかる圧力を受け止めるための工夫です。筒の側面だけでなく、底やふたも、それぞれにかかる力に合わせて形づくられています。

円筒形は、いくつもの条件を合わせた形

球形の容器は圧力を受ける形として効率がよい一方、転がりやすく、置いたり持ったりするのに向きません。箱形は棚や運搬用の箱に隙間なく並べやすいものの、平らな面を圧力から守る工夫が必要です。円筒形は、持ちやすさ、圧力への強さ、軽さ、機械で作りやすいことのバランスを取っています。どの形にも長所と短所があり、飲料缶ではこの組み合わせが実用的なのです。

参考資料